はじめに
最初はできものやニキビにも似ているアテローム。これは粉瘤(ふんりゅう)とも呼ばれる良性の腫瘍です。外からでも目立つほどに大きく成長することもあるのが特徴といえます。頭は、痛みが生じれば髪の毛を洗ったり、帽子をかぶったりなどができなくなる可能性もある場所だけに、正しい知識と対処法が必要になります。
最悪の場合には、頭部であろうと大きく切開して除去手術をしなければならないこともあります。そうならないためにも、ここでは、アテロームが大きくなる原因や対処法などを解説します。
目次
アテロームが大きくなる仕組み
アテロームは、表皮や上皮がめくれあがって皮膚の内部に侵入してしまうことによって生じます。内部に侵入したあとも垢などが剥がれ落ちるために老廃物が蓄積されていくので、やがては、袋状の嚢胞を形成して腫れあがってしまいます。
最初は1センチから2センチ程度の大きさでニキビと見分けがつかないことも多いですが、アテロームはニキビとは違って、5センチ以上の大きさに成長することもあります。
アテロームは、皮膚ならばどこにでも生じる可能性があり、頭部や耳、顔、背中、腰などのほか、手や足などにも現れます。通常、ほとんど自覚症状はありませんが、嚢胞が破れたり二次感染を起こしたりすると、赤く腫れあがって痛みを伴った「炎症性粉瘤」になってしまいます。特に、頭部にできたアテロームが大きくなってしまった場合には、見た目や痛みの問題と同時に、クシで髪をとかしにくいなどの実用面でも不便が生じます。
なお、アテロームができる原因は今でも明らかになっていません。頭に生じた場合も不潔にしていたからできたわけではないので、頭皮を清潔にすれば治るというものではありません。
放置しておけば自然治癒するどころか、次第に大きくなってしまう可能性が高いので、頭のアテロームが気になったら、すぐにでも専門医の治療を受ける必要があります。
頭のアテロームをきれいに治すには
頭のアテロームは、頭頂部のほか、後頭部や側頭部、おでこなど、あらゆる場所に生じます。初めは小さかったアテロームも、時間の経過とともに老廃物がどんどん溜まっていくため、放置しておけば頭頂部であろうと、どんどん大きくなってしまいます。だからといって、無理に潰したり引っ掻いたりすると細菌が入り込んで感染を引き起こし、炎症が発生する可能性もあります。
炎症を起こしたアテロームは、2倍から3倍の大きさにまで成長してしまうことがあるので注意が必要です。また、炎症によって痛みを伴う可能性もあるため、絶対に自分で潰そうとしてはいけません。汚れている手で触るなどの行為も控えた方が無難です。なお、風邪などによって体の免疫力が弱まっているときにも、感染によって嚢胞が炎症を起こし、アテロームが大きくなってしまうことがあります。
自分で処置しようとすればするほど、アテロームは大きくなってしまいます。炎症がひどくなれば、嚢胞が周囲の皮膚と癒着してしまう可能性も高まり、手術でアテロームを除去しても傷跡が残ってしまうこともあります。炎症を起こしていないアテロームの除去手術では、傷跡は少しずつ皮膚になじみ次第に目立たなくなっていくのが一般的です。このように、早めの除去手術こそが、頭のアテロームをきれいに治す秘訣です。
頭のアテロームが大きくなる前に受診を
頭部にはアテローム以外にもさまざまな「できもの」が生じますが、アテロームは良性な腫瘍なので、必要以上に心配することはありません。ただし、そのまま放置してアテロームが大きくなってしまったり、感染症を起こしたりするリスクを考慮すれば、恥ずかしがらずに、できるだけ早く除去手術を受けた方がよいでしょう。
無理やりアテロームを押し潰して中身の膿など出せば、一時的に嚢胞が空になるため治ったように見えるかもしれません。しかし、実際には嚢胞が残留しているために再び嚢胞の内部に老廃物が溜まって、アテロームが大きくなってしまいます。
アテロームをニキビなどと勘違いしてそのまま放置してしまうというケースもありますが、ニキビは痛みもなく、5センチ以上にまで大きくなることもありません。ニキビのほかにも脂肪の塊などと勘違いしてしまう例も多いので、頭部のできものが気になったら自分で判断せず、専門医の診断を受けましょう。
頭部のアテロームは目立ちますし、気になる場所でもあるため、自分で何とかしたいという気持ちになりますが、アテロームは、自己流の治療で治ったり、自然治癒したりすることはありません。アテロームを完治させるためには、専門医による除去手術以外に選択肢はありません。
頭のアテロームは手術でしっかり除去
アテロームはこれまで紡錘形に切除して取り除くのが一般的な術式でしたが、現在では、患部を小さく切開することで術後の傷跡を目立たなくする「くり抜き法」という術式を取り入れている医院が増えています。
くり抜き法には、手術の時間が短くて済むというメリットもあります。パンチのような特殊な手術道具でアテロームに小さく穴を開けて内部の老廃物などを絞り出したあと、嚢胞を丸ごと抜き取って手術は完了です。
手術時間は約15分前後、アテローム周囲の髪の毛を少し剃るだけ済みます。医院によっては、全く髪の毛を剃る必要がないところもあるので事前に確認してみましょう。特に感染症などのトラブルが発生しなければ、通常は術後1週間から数週間程度でアテロームは完治します。
このように、優れた術式のくり抜き法ですが、すべてのアテロームに適した方法というわけではありません。くり抜き法が不適応なアテロームもいくつか存在します。
・感染を起こして周囲と癒着してしまっている場合
周囲と癒着してしまっている状態では、くり抜き法で完全に除去することができません。ほんのわずかでも被膜の取り残しがあれば再発してしまいます。
・繰り返し再発をしているアテローム
何度も再発をしている場合、内部がアリの巣のように広がってしまうことがあります。この例でもすべての被膜が取りきれません。
・感染している場合
感染、炎症をしている場合には、術式に関わらず手術ができないケースが多く、基本的には炎症を鎮める治療から始めることになります。
まとめ
現在でもアテロームができる原因はよくわかっていないため、アテロームが生じるのを予防することはできません。しかし、頭にできたアテロームが大きくなる前に対処することは可能です。
すなわち、早急な専門医による診断と除去手術によって、アテロームが大きくなって痛みや炎症が生じる前にきれいに取り除くということです。頭という目立つ場所だけに、できるだけ早い専門医の診察を受けて、アテロームの肥大化や痛みを防ぐようにしてください。