首筋のしこりは危険信号?首筋の粉瘤の治療法と注意点のまとめ

はじめに

お風呂に入っているときやコリをほぐそうとマッサージをしているときなど、首筋にコリコリとしたしこりを見つけることがあるでしょう。直にみることができず痛みも特にないからと放置していたら、だんだん大きくなっているような気がして医療機関を受診したら「粉瘤(ふんりゅう)」と診断されるケースも見受けられます。

粉瘤とはいったいどのようなものなのでしょうか。また、予防や治療はどのようにしたらよいのでしょうか。本記事では、首筋の粉瘤の予防方法を解説していきます。

首筋のしこりは粉瘤かもしれない

首筋にコリコリとした「しこり」を見つけたら、それは粉瘤である可能性があります。粉瘤は身体中どこにでもできる可能性のある皮膚腫瘍の一種で、顔や首筋、背中、耳の後ろなどにできやすいといわれています。

良性腫瘍ですので、粉瘤ができたからといって必ずしも治療しなければならないものではありませんが、放置することで化膿して赤く腫れたり、痛みや発熱をともなったりすることもあります。また、野球ボールほどまで大きくなって、日常生活に支障をきたすことや、まれに粉瘤がガン化するケースもあるなど、何らかのトラブルを引き起こす可能性もあります。

医学的にみると粉瘤には「表皮嚢腫」「外毛根鞘性嚢腫」「多発性毛包嚢腫」と種類があり、ほとんどの粉瘤は表皮嚢腫です。外毛根鞘性嚢腫は頭にできることが多く、触った感覚は表皮嚢腫よりも硬く感じることが多いといわれています。

多発性毛包嚢腫は、首筋や腕、わきなどに群発するもので、数個から多いと20~30個ほど発生します。粉瘤の内容物は強い臭いを発することが多いのですが、多発性毛包嚢腫の場合はマヨネーズのような黄色いドロッとした物質が中に入っており、臭いがないのが特徴です。

粉瘤は、皮膚腫瘍の中でもメジャーなものです。

首筋に粉瘤ができる原因と予防法

粉瘤とは、皮膚の一部が皮下にめくれて袋状の構造物を形成し、その中に皮脂や角質など老廃物がたまったもののことです。

手のひらや足の裏などにできる粉瘤はけがによって皮膚がめくれることが原因になっていたり、わきの下や首筋、背中などに群発する場合は体質が関係していたりするといわれています。また、打撲やニキビのあとに粉瘤ができることもあります。

粉瘤にはヒトパピローマウイルス(ヒト乳頭腫ウイルス)が関係しているということもわかっていますが、なぜ皮膚がめくれてしまうのかについては明確な原因はいまだ判明していません。そのため、首筋に粉瘤が発生する原因についても詳細はわからず、粉瘤の予防法についても効果のあるものが何なのかはわかっていません。

ストレスや運動不足などの不規則な生活、たばこや飲酒、野菜不足などの偏った食生活、洗顔不足による細菌発生などが原因ではないかと考えられることがありますが、これらはニキビの原因になりうるものであっても、粉瘤ができる原因であるとは言えません。

粉瘤は子どもから年配の方まで男女問わずできる可能性があり、小さいものであれば経過観察になりますが、大きくなってしまったものは手術をして袋ごと取り除くほか治療法がないといわれています。

粉瘤ができたらなにからすべき?

できてしまった粉瘤は、まれに大きくならずに自然に消失するケースも見受けられますが、多くの場合は手術によって皮膚と一緒に袋状の構造物を取り出さなければ治らないと考えられています。

前述の通り、良性の皮膚腫瘍ですからあえて治療をせずに放置する人もいますし、首筋のように見えない場所で気づかず放置していたという人もいるでしょう。しかし、放置することによって細菌が粉瘤の中に入り込んで化膿したり、赤く腫れて痛みをともなったりすることがあります。化膿した粉瘤を圧迫することで皮膚の下で袋が破けて膿が散らばり、膿皮症になってしまうことも考えられます。化膿を繰り返すことで粉瘤がガン化したという報告もあります。

また、数ミリから野球ボールほどの大きさにもなる粉瘤ですから、だんだんと大きくなって日常生活に支障をきたすことや、顔にできた場合などは美容面で気になってしまうこともあるでしょう。

何らかのトラブルを引き起こす可能性がありますので、粉瘤が小さいうちに医療機関を受診して専門家と相談しながら対処していくことをおすすめします。

また、粉瘤だと思っていたものが詳しい検査を受けたら実は脂肪腫や耳前瘻孔だったというケースも見受けられます。超音波検査やMRI検査、生検などで詳しく診てもらい対処法を教えてもらうと安心でしょう。

粉瘤の治療方法とは?

首筋にできた粉瘤を根治させるには、手術によって袋状の構造物を取り出す必要がありますが、粉瘤の状態によって、手術か経過観察か判断されます。

手術をする場合は、粉瘤の大きさや化膿しているか、周辺組織から袋の剥離が容易にできそうかなどを検討したうえで「くり抜き法(へそ抜き法)」か「小切開摘出術(小切開圧出後摘出術)」かの術式が決まります。

炎症を起こしたことがなく、サイズが小さい場合はくり抜き法が用いられます。この方法は、粉瘤の開口部から直径4mmほどの大きさのメスを差し込み、袋の一部をくり抜く方法です。これによって袋に開いた穴から内容物をもみだして小さくしつつ、袋を取り出していきますので、傷跡が小さく、短時間で手術が終わります。ただし、傷口を縫わないため炎症を起こす可能性があります。また、袋を取り残してしまい粉瘤が再発する可能性もあります。

小切開摘出術は、粉瘤周辺の皮膚を紡錘形に切開して、内容物の詰まった袋を摘出する方法です。小切開圧出後摘出術では、皮膚と一緒に埋まったままの袋を切開し、内容物を圧出して粉瘤を小さくしてから袋を取り出す手術法です。袋を摘出した後は皮膚を縫い合わせて手術完了となります。くり抜き法に比べて傷跡は大きくなりますが、袋の取り残しがないため再発の可能性が低くなります。また、大きな粉瘤でも手術することができます。

まとめ

首筋をはじめ、身体中どこにでもできる可能性のある粉瘤は、皮膚がめくれて袋状の構造物を形成し、その中に老廃物がたまったものを指します。現時点では、皮膚がめくれる明らかな原因はわかっておらず、明確な予防法も見つかっていません。そのため、できた粉瘤に対して適切に処置することが大切だといえるでしょう。

良性の皮膚腫瘍のため放置することもできますが、トラブルを引き起こさないためには手術による根治をおすすめします。

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