体のしこりの正体とは?~アテローム(粉瘤)の特徴と対処法まとめ~

前説

「なぜかこんなところにしこりができている」
「痛みもかゆみもないが何となく人に見られたくないしきになってしまう。」
自覚症状からだんだん気になってくる体のできものってありませんか。
実は、その皮膚疾患はアテローム(別名:粉瘤(ふんりゅう)あるいはアテローマ)とも呼ばれている皮膚疾患のひとつかもしれません。あまり聞くことのない病名だけに、アテロームとは一体どんな病気なのだろうと心配になってしまう方も多いかと思います。
この記事では、アテロームとはどのような特徴を持つ皮膚疾患なのか、また見つけた時にはどう対処したらいいのか、といったことについてご説明します。

1. アテロームってどんな特徴がある疾患なの?

アテロームは一見すると、まるで皮膚の下にこぶがあるかのように見えます。同じように、皮膚にこぶのようなしこりができる皮膚疾患には、脂肪腫というものがあります。この2つの疾患は、その症状こそ似ているものの、その性質は全く異っている別の疾患で、一般的には脂肪腫よりもアテロームのほうが多く見られる傾向があります。

  • 脂肪種
    脂肪腫の中に含まれているのは、その名前からもわかるように文字通り「脂肪の塊」です。
  • 一方、アテロームの中に含まれているものを分解してみると、そこには「皮膚から排出された」あぶらのかたまり(皮脂)や、本来は肌の表皮から剥がれ落ちるはずだった角質などが含まれているのがわかります。

つまり、脂肪種には脂肪がアテロームには垢などの排出物が溜まってしまっているのです。また、アテロームを詳しく調べてみると、皮膚の下に嚢腫(のうしゅ)と呼ばれる袋状のものができているのですが、その袋の中に溜まっている皮脂や角質は外に排出されず、さらに溜まっていく一方です。そのため時間の経過に伴ってどんどん大きくなる傾向があります。

アテロームは、大きな目立つしこりができるわりには、痛みやかゆみはあまりないのが特徴ですが、なんらかのアクシデントなどで嚢腫部分に力が加わり破れてしまうと、強い悪臭を伴った内容物があふれ出すことがあります。

アテロームは大きく分けて3種類ある

医学的な見地から見ると、アテロームには大きく分けて3種類あります。その3種類とは、表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)・外毛根鞘性嚢腫(がいもうこんしょうせいのうしゅ)・多発性毛包嚢腫(たはつせいもうほうのうしゅ)と呼ばれるものです。いずれも出来る場所や内容物、しこりのかたさなどに違いが見られます。

  • 表皮嚢腫
    表皮嚢腫は3つの中で最もポピュラーな嚢腫です。毛穴の上部がめくれ上がり、その部分が袋のようなものを形成してしまい、そこに皮脂や角質などが溜まっていくものです。表皮嚢腫では大きなしこりが出来ている状態ではあるものの、そのしこりの袋になっている部分は、健康な表皮と同じような構造になっています。この表皮嚢腫は3種類の中で、一番よく見かけるタイプのアテロームです。
  • 外毛根鞘性嚢腫
    外毛根鞘性嚢腫は比較的珍しいタイプのアテロームであり、ほとんどの場合は頭部に生じる傾向にあります。また、このタイプのアテロームに触れてみると、硬く感じるのが特徴です。
  • 多発性毛包嚢腫
    多発性毛包嚢腫は文字通りアテロームが数多く生じる(多発)のが特徴であり、現れる場所も大体決まっています。また多発性毛包嚢腫の場合は、嚢腫に力が加わり破れてしまったときでも特に気になる臭いがない場合が多く、内容物もマヨネーズのような、ドロっとした液状のものであることが特徴といえます。

アテロームができやすい場所とは

前項でご紹介したように、アテロームには大きく分けて3種類ありますが、その種類によってできやすい場所や数には違いが見られます。

アテロームは袋のような構造で、その袋の中は皮膚のような構造になっています。皮膚は全身にあるものなので、そのメカニズムからすると、基本的には身体のどこにでもできる可能性があるものです。

ときには20~30個ほどのアテロームができることもある多発性毛包嚢腫の場合は、ワキ・胸・腕・首・背中などに比較的多く発生する傾向にあります。

また基本的に表皮嚢腫は、毛穴の上部がめくり上がって袋を形成することによって生じるものです。そのため毛がない部分にはできないようなイメージがありますが、実際は毛がない場所にもできることがあります。

たとえば、足の裏や手のひらには毛は生えておらず、もちろん毛穴もありませんが、外傷性表皮嚢腫と呼ばれるアテロームが出来る場合があります。この外傷性表皮嚢腫は、ケガをして皮膚に傷がついてしまった場合、その皮膚が下にめり込んでしまうことによって生じるといわれています。外傷性表皮嚢腫が足の裏にできてしまった場合には、常に体重がかかっている状況にあることから、外側には腫れず、皮膚の下に袋を形成します。そのため、ときにウオノメやタコと間違えられてしまうこともあるのです。

アテロームを見つけた時の対処法とは

アテロームは皮膚疾患ではありますが、良性腫瘍であることがほとんどです。そのため、もし大きなアテロームができていたとしても、それがすぐに生死に関係してくるということはあまりありません。

ではアテロームを見つけた時にはどうしたらいいのでしょうか。

ここでまず知っておきたいのは、「アテロームは良性腫瘍であることが多いものの、そのまま放置しておいても自然に消えることはない」ということです。もちろん、偶然何らかのアクシデントでアテロームの袋が破れてしまった場合には消えますが、袋の部分が残っている場合には、再発する可能性があります。

アテロームの治療は、基本的には手術となりますが、状況によって術式やタイミングが異なってきます。たとえば、アテロームが炎症や感染を起こして膿んでしまっている場合には、一刻も早く皮膚切開して膿を排出しなければなりません。一方、アテロームはあっても特に赤みや痛みがないという場合には、医師と相談して、適切なタイミングでくり抜き法などの外科的治療を受けることになります。

ただし、炎症や感染を起こしていない場合には、必ずしも手術を受けなければならない、というわけではありません。そういった場合には、あくまでも最終的な決断は自分自身で行うことになります。

まとめ

  • アテロームにはよく似た脂肪種という皮膚疾患があるが、アテロームは排出物が溜まっているという点で全く異なる疾患である。
  • アテロームには3種類ありそれぞれ特徴が異なる
  • アテロームは体全体にできうる疾患だが、首上にできた際には注意が必要
  • アテロームの治療法は手術のみ

アテロームははじめは小さく気になりませんが、だんだんと大きくなってきたり、炎症が起こり、痛みが出ると気になってきてしまいます。その過程でつぶそうとしてみたりすることでさらに悪化し化膿につながることもあります。

そのまま放置しておいても自然に消えることはないため、アテロームの除去を希望する場合は、手術を受ける必要があります。ただしアテロームは良性腫瘍であることがほとんどであることから、炎症や感染を起こしておらず、自分でもあまり気になっていないという場合には、必ずしも受けなければいけないというものではありません。

ですが、もしアテロームに少しでも赤み・痛みがあったり、膿んでいたりする場合には、もしかしたら別の危険性の高い疾患かもしれないので、できるだけ早く医療機関で診察を受けるようにしてください。

Top