はじめに
粉瘤(ふんりゅう)は、皮膚の下にできた袋状の嚢腫(たいしゅ)の中に、本来なら自然にはがれ落ちるはずの皮膚の角質や皮脂が溜まり、しこりのような塊ができる皮下腫瘍のことです。アテローム(アテローマ)や表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)と呼ばれることもあります。
粉瘤は、良性の腫瘍であることから、経過観察をすすめられる場合もありますが、自然に治癒することはなく、放置しておくと大きくなっていきます。初期の段階で摘出手術を受ければ、傷跡も小さく費用や回復期間などの負担が少なくて済むというメリットがあります。ここでは、粉瘤の症状や手術、手術後すぐに運動をしてもいいのかなどについて紹介します。
粉瘤(ふんりゅう)の初期症状は?
初期段階の粉瘤は数mm程度の大きさで、皮膚ほんの少し盛りあがるような見た目で、触るとやわらかいしこり状の塊になっています。虫刺されの跡やにきび、おできのような見た目をしていることもあり、中心に黒い小さな点のような穴があることも多いです。
粉瘤は、額やあご、耳たぶのうしろ、まぶたの横など、顔の一部にできるほか、腕、足、背中、脇の下、おしりなど、場所を問わずさまざまな箇所にできます。
一度できてしまった粉瘤は、そのままにしておいても自然に治癒することはありません。角質や皮脂が中に溜まっていくため、徐々に大きくなることが多く、場合によっては、数cmほどの半球状やボール状になることもあります。
中心に黒い点のような穴がある粉瘤が圧迫された場合や、袋状の嚢腫が破れた場合などは、中から内容物が飛び出し悪臭を出すこともあります。見た目がおできのような形状をしていることから、自己判断でおできだと勘違いしたまま放置し、診断が遅れて重症化した症例もあります。
診療所やクリニック、病院などでは、良性の腫瘍であることからもう少し大きくなるまで様子を見ましょうと診断を受けることもありますが、近年では早めの摘出手術をすすめる医療機関も多くなっています。
粉瘤の診断はどこで受けられる?
粉瘤の可能性があるしこりを見つけたときは、皮膚科を受診して診断を受けるのが一般的です。皮膚科以外でも、皮下腫瘍を熟知した医師が在籍している診療所やクリニック、病院であれば受診が可能です。
八王子には、たくさんの皮膚科が揃っています。土曜日の午前と午後、平日でも19:00まで診療が受けられる医療機関もあるので、自分の予定に合わせて受診することができます。
診断は、初期のものであれば触診での診断になることがほとんどです。初診時に、すでに大きくなっているものや炎症が見られる場合は、超音波(エコー)検査やMRI、CTなどの検査をおこなうこともあります。
粉瘤の診断を受けたあとの治療については、担当の医師と相談しながら決めていきます。従来は、粉瘤と診断された場合でも、痛みがなければ経過観察をすすめられたり、悪性ではないことからそのままでも問題はないとアドバイスをすることも多かったようです。
粉瘤は、放置していても自然に消えるようなことがほとんどありません。放置しているうちに大きくなってしまったり、炎症を起こすようなこともあります。早めの摘出手術により袋状の嚢腫を取り除くことができれば再発も防げますし、小さいうちであれば術後の傷跡もほとんど残らないというメリットがあります。
粉瘤の手術はどんなもの?
粉瘤の手術は、皮膚科や形成外科専門医が在籍する医療機関での手術になります。痛みや腫れなどがない状態で2~3cm以下のものなら、診療所やクリニックでも日帰りで手術が受けられます。
実際の手術は、局所麻酔を用いておこなわれます。従来の粉瘤の手術は、真ん中が太く両端が細くなる紡錘形(ぼうすいけい)に切開したあと、袋状の粉瘤を取り除き縫合するという手順が用いられていました。確実に粉瘤を取り除くことができるこの方法は、再発率が低いのが特徴でしたが、傷跡が大きくなるというデメリットもありました。
近年の医療技術の進歩に伴い、可能な限り手術の傷跡を残さない方法として、へそ抜き法と呼ばれる方法が開発されました。へそ抜き法は、粉瘤の表面に小さな穴を開け中に溜まった角質や皮脂の塊を取り出したあと、袋を抜き取るという方法です。袋を抜き取ったあとは、縫合して完了です。
この方法であれば、傷跡が数mm程度と最小限になるほか、手術にかかる時間も短かいというメリットがあります。初期症状の小さな粉瘤や手術の傷跡を可能な限り残さず治療したい場合に、用いられることが多くなっています。
従来このへそ抜き法は、炎症を起こした炎症性粉瘤には適用がむずかしいとされていました。けれども、一部の粉瘤の治療を専門とする医療機関では、傷跡を残さず負担のない治療を選ぶ意味からへそ抜き法の手術を受けられる場合もあります。
粉瘤の手術をしたらすぐに運動してもいい?
粉瘤は、初期のものであれば局所麻酔の日帰り手術が可能です。手術で縫合した場合は、1週間前後に抜糸になりますが、それまでの期間は通院の必要がありません。処方された薬の服用しながら患部を清潔に保つようにします。湯船に浸かるのは控え、シャワーのみで過ごします。
炎症などを起こしていない粉瘤の場合手術は短時間で済みますが、当日と翌日は出血の可能性もあるため、運動は控えるようにします。2日以降であれば軽い運動が可能ですが、関節に近い箇所を手術した場合は、運動で刺激を与えすぎないように注意する必要があります。
飲酒も同じく、当日と翌日は控えるようにします。手術をした日の入浴は避けます。翌日からシャワーのみ可能ですが、傷跡を石鹸などで洗い清潔に保つようにすることが大切です。
手術後の傷跡が、どれくらいの期間で目立たなくなるのかは気になるポイントです。手術で切開した箇所を縫合した場合は、1週間前後に抜糸をします。小さな粉瘤の場合は、この時点で腫れがひき少し肌に赤みが残る程度の状態になります。赤みがなくなりほぼ傷がわからない状態になるまでの期間は、手術時の切開部分の大きさにもよりますが、1~2ヶ月後には、ほぼ目立たない状態まで回復する場合がほとんどです。
まとめ
粉瘤の初期症状や診断を受けられる医療機関、診断や手術の方法、手術をしたらすぐに運動してもいいかなどについて紹介しました。粉瘤は、初期の小さなものであれば手術も短時間で済み、費用などの面でも負担が少なくて済みます。
顔などにできた粉瘤を治療すると、傷跡が残るのではと心配する方がいるかもしれません。そのまま放置するよりも早めに適切な治療を受けることが、より傷跡を残さないためには必要です。気になる症状が出たときは、早めの受診を検討してみてください。