前説
良性腫瘍の一種であるふんりゅう(粉瘤)が背中にできることは珍しくありません。
なぜか背中にばかりふんりゅうができる、あるいは背中にすぐふんりゅうができてしまう、といったような人はいるのでしょうか。いるとすれば、その原因は何なのでしょうか。
ここでは、背中にふんりゅうができる原因や、背中にふんりゅうができやすい人がいるのかなどの解説をしていきます。実際に背中にふんりゅうができてしまった場合の対処法も併せて紹介していますので、背中のふんりゅうで悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
背中に粉瘤ができる原因は?
皮膚の腫瘍の中でも発症することがもっとも多いのがふんりゅうです。ふんりゅうは良性の腫瘍なので放置していても命にかかわるような事態にはなりませんが、日常生活に支障をきたすことはあります。
ふんりゅうは「アテローム」とも呼ばれ、皮膚が内側にめくれてしまい、袋状の嚢胞となって皮脂や垢などが中に蓄積され膨らんでいく皮膚疾患です。ふんりゅうの特徴として、しこりの中央部分に黒点の開口部が見られます。
ふんりゅうは皮膚であればどこにでもできますが、背中や耳などにできやすい傾向があります。ここで注意したいのは、背中や腰、臀部などにふんりゅうができ内容物が皮脂内で散らばることで炎症を引き起こして悪化する可能性は高くなるという点です。
ふんりゅうは細菌による感染でも炎症を引き起こすことがありますが、実際、そのほとんどは圧迫されたことによる破裂が原因で炎症性のふんりゅうへと悪化していきます。
残念ながら現在のところ、ふんりゅうができるはっきりとした理由はよくわかっていません。したがって、ふんりゅうに対する予防法はないというのが現状です。なお、体質的にふんりゅうができやすい人は一定数存在します。
背中のふんりゅうを治す方法
ふんりゅうが生じるハッキリとした原因がわかっていないため、予防法も現在のところは存在しません。ストレスの解消、あるいは、適切な運動や食生活の改善、しっかりと睡眠をとるなど、ふんりゅう予防の方法としてさまざまの事がいわれていますが、ふんりゅうを完治させる方法は除去手術以外にはありません。
背中や腰、臀部などにふんりゅうができてしまった場合には、ふんりゅうが圧迫されて悪化してしまう可能性が高いので、早急な除去手術が必要となります。
これまでは切開をして嚢胞内部の内容物を取り除き、そのあとで縫合するという術式が一般的でしたが、最近では「くり抜き法」という、皮膚への負担を軽減させることができる術式を採用している専門医が増えています。
くり抜き法では、まず、患部に局所麻酔を打ったあと「ディスポーザブルパンチ」という円筒状のメスを使用してふんりゅう皮膚部に穴をあけ、皮下から垢や膿などを取り除きます。最終的には嚢胞そのものを取り除き、空洞となった部分にガーゼを詰めて終了です。
切開から終了までは 10分から15分程度となります。手術という名前はついていますが、背中の場合は診察室でそのままできるような簡単な手術内容です。
傷口に詰めたガーゼ交換のために二日間ほど通院をしますが、その後は、抗生剤などの服用をする程度で通院の必要はありません。通常、術後数週間程度で完治します。
ふんりゅうと間違えやすい背中ニキビ
顔などにできるニキビと同様に、背中ニキビも活発化したアクネ菌が原因で発生します。ただし、顔とは違い背中は薬が塗りにくいため、器具を使ってニキビの膿などを外に出す「面皰圧出」という治療が行われることがあります。いずれにしても、治療法としては顔などにできるニキビと同じで、清潔にする、薬を塗るなどといった予防法で対処できます。
ふんりゅうの場合は、古い角質層などの垢が袋状になって中に溜まっているので、ニキビとは違い、外に出そうとしても簡単には出せません。また、外に出したところで完治するものでもありません。
背中のニキビと初期のふんりゅうは見た目が似ているため、ついつい勘違いしてしまいがちです。薬を塗ったり、清潔にしたり、場合によっては自分で潰したりなどしてしまう人もいます。
肥大化してきた場合は特に注意が必要です。ニキビは5センチ以上もの大きさになることはありません。「背中ニキビがどんどん大きくなってくる」などということはないので、そのようなケースはふんりゅうと考えて、皮膚科、または形成外科で治療を受けてください。
無理矢理にふんりゅうを潰して内容物を取り出せば、一時的には小さくなるので、ふんりゅうが治ったように見えます。しかし、ニキビと違って嚢胞が中に残っていれば何度でも再発するのがふんりゅうです。
背中だからといってふんりゅうを放置しない
ふんりゅうはできるだけ早く専門医の治療を受けて完治させたいところですが、実際には嚢胞の内容物が圧迫されて破裂したり、感染をしたりして炎症を引き起こし、あまりの痛みに耐えられなくなって病院へ行くというケースが多くなっています。そのような事態になるまで放置してしまう原因は、「ふんりゅうをほかのできものやニキビなどと間違えてしまう」という理由が大半です。
特に背中にできた場合には自分の目で確認するのが困難なため、判断を誤ることも多くなるでしょう。ただの「できもの」や脂肪の塊かと思ってそのまま放置してしまったり、自分で潰そうとしたりすることで細菌が入り、内部で炎症を起こした粉瘤が2倍3倍の大きさになってしまうことも珍しくありません。
顔や首と違って背中は目立たないからと放置するのも考えものです。たしかにふんりゅうは基本的に害のない良性腫瘍ですが、放っておけばどんどん肥大化してしまいます。いずれは炎症を引き起こしてしまい、耐えられない痛みが発生する可能性も高くなります。そうなってしまうと手術も大掛かりになり費用もかさみ、完治するまでの日数もかかります。背中とはいえ、傷跡も残ってしまうでしょう。ふんりゅうは自然治癒することがないので、背中だからといって軽視しないようにしたいところです。
まとめ
ふんりゅうができやすい体質の人は一定数存在します。また、背中や耳など、ふんりゅうができやすい場所というのもあります。だからといって、背中にばかりふんりゅうができるということはありません。
いずれにしても、背中のふんりゅうを放置しておけば、圧迫されるなどして炎症を引き起こし、重症化する可能性もあります。できてしまった背中のふんりゅうは自分で何とかしようとせず、早急に専門医を受診して適切な除去手術を受けるようにしましょう。