耳の粉瘤手術まとめ~費用や手術法、傷あとなどポイント解説~

はじめに

耳たぶや耳の付け根後ろあたりに、米粒程度の小さなしこりができることがあります。おできや脂肪の塊と自己診断してしまう方もいらっしゃいますが、これは粉瘤というものです。粉瘤とは皮膚が体内に向かって成長し出来上がった袋に、角質や垢が詰まって成長したものです。
目立つようになってくると、ピアスやイヤリングなどのおしゃれがしにくくなります。また耳の異物感が気になり、つい触っているうちに化膿し腫れてしまうなど症状の悪化を招く場合もあります。
耳に出来た粉瘤は手術で取り除くことができます。手術の手間、費用、傷跡など気になる点をまとめてみました。

耳の粉瘤は手術するべき?

粉瘤とは、アテロームあるいはアテローマとも呼ばれる良性の腫瘍の一種です。耳に限らず、身体中のあちこちにできる可能性があり、目の届かないところ、手が触れないところだと気がつかないまま放置されることもあります。
一方、場所によっては、かなり気になるケースもあります。耳たぶや耳まわりは癖で触る方もいらっしゃるでしょう。また洗顔、洗髪時に触れるのでその度に違和感を感じることになります。
粉瘤は周囲の皮膚に比べて、コリコリと固く皮膚に密着しているのですぐにわかります。
その正体は、前述したとおり皮膚が体内に向かって袋状の器官を形成し、そこに角質や垢が溜まったものです。自然治癒する可能性もありますが、逆にどんどん大きくなることもあります。
まだ小さいうちに、ニキビなどをつぶす要領で自己治療を試みる方もいらっしゃいますが、これはおすすめできません。袋に溜まった角質等だけを無理やり絞り出しても、袋がそのままだとまた再発してしまいます。
また、自己治療は細菌感染のリスクもあります。細菌感染を起こした粉瘤は、急に大きさを増し、赤く腫れ、痛みも伴うようになります。こうなるとなるべく早く医師にかかるべきですが、それでも放置していると、脂肪組織内に膿が散らばり、濃皮症という状態になり慢性化する恐れもあります。
このような状態にまで進むと、治療の時間も費用も大変です。耳に粉瘤を見つけたら、あまり大きくならないうちに医師に相談し、手術による除去も検討するのがベストです。

粉瘤の代表的な手術方法

粉瘤は、自然になくなる場合もあります。しかし、それを期待して放置しても、むしろ少しずつ大きくなってしまうケースがほとんどです。粉瘤の根治は、手術によって袋ごと摘出してしまうしか方法はありません。
その手術方法ですが、従来型の方法と臍抜き法(くり抜き法)という新しい手法の2つがあります。
従来型の手術方法から説明しましょう。
紡錘型に皮膚を切開し、袋ごと粉瘤を取り除き、その後切開した傷を縫合する、のが従来型の手法です。粉瘤の根治には角質等を貯めてしまう袋の完全除去がポイントです。この方法だと、簡単に袋を除去できますが、大きめの切開と縫合が必要で傷跡も大きくなりがち、という欠点があります。しわの多い部位にできた粉瘤だと、しわの流れと切開の方向を揃えることで傷を目立たなくすることもできますが、耳の場合はそうもいきません。
一方の臍抜き法(くり抜き法)は、粉瘤に小さな穴を開け、そこから詰まった中身を掻き出し、最後にしぼんだ袋も掻き出してしまうという方法です。その特徴は、なんといっても皮膚につける傷跡が小さいことが特徴です。小さな粉瘤の場合は、傷跡の縫合の必要もありません。粉瘤が大きな場合でも、縫合の数は従来型よりもかなり少なくなります。欠点は、従来型に比べると経験を積んだ医師が少ないことです。また、極端な大きさの粉瘤、癒着のひどい粉瘤には対応できないこともあります。
粉瘤の状態や、希望の術式を検討し、医師に相談するようにしましょう。

術後の経過、傷跡はどの程度?

手術自体は、従来型、臍抜き法(くり抜き法)のいずれも短時間で終了します。局所麻酔を使い、粉瘤を切除、傷内部を生理食塩水で洗い、縫合という流れです。臍抜き法の場合、傷口が小さければ縫合は行いません。皮膚表面に穴が開いたような状態になるので、傷つけたり雑菌が侵入しないようにガーゼ、テープなどで保護して様子を見ることになります。
手術は日帰りで完了し、後は傷の様子の経過観察となります。傷が落ちつくまでは、入浴時には気を使う必要がありますが、それ以外に日常生活で不便を感じる場面はありません。
1週間程度で傷は塞がりはじめ、1ヶ月ほどでほぼ完治となります。
従来型手術の場合、どの程度の切開を行ったか、縫合がどれだけ上手くできたかによりますが、やはり傷跡は大きくなってしまいます。臍抜き法の場合は、これも開けた穴の大きさによりますが、それでも従来型よりは間違いなく傷口が小さくすみます。臍抜き法の術後の傷のイメージは、にきび跡のような傷跡が薄く残ることがある程度です。
耳の後ろは目立ちにくい場所ですが、耳たぶは比較的目に付きやすい箇所です。どちらの手術法を選ぶかは、粉瘤の場所や大きさによっても変わってきます。顔前面の向きの粉瘤であれば、極力傷跡の残らない方法で行いたいものです。

耳の粉瘤手術にかかる費用

粉瘤の手術には、ある程度の専門性はありますが、一般の病院(皮膚科、外科)で保険診療として行っています。従って、どこの病院で行っても基本的には大きく費用が変わることはありません。
粉瘤の手術は、「皮膚、皮下腫瘍摘出手術」として保険点数計算されます。この中で露出部、裸出部以外、摘出腫瘍つまり粉瘤の大きさによって点数が変わります。
例えば耳たぶの1cmほどの粉瘤の場合、露出部で直径2cm未満に分類され、保険点数は1,660点です。露出部は2cm未満、2〜4cm、4cm以上の3分類です。点数は、1,660点、3,670点、4,360点と変化します。部位を考えても4cmを超えることはほとんどないでしょう。
金額は、1点10円で計算されます。点数を10倍して、負担割合をかけたものが費用になります。
つまり、2cm未満の耳の粉瘤であれば、4,980円です。
実際には、診察料(初診料、再診料)、検査、処方箋などの点数も加算されるので、もう少し高くなりますが、おおよそのイメージは持っていただけると思います。
粉瘤の手術は、美容整形外科などでも行っているところがあります。傷跡を極力目立たないようにしたい、などの理由で美容外科を検討したい、という方もいらっしゃるかもしれません。この場合は完全に自由診療となってしまいますので、どの程度の費用がかかるかはわかりません。どのような施術でどのような成果が期待できるのか、費用はどのくらいかをよく医師と相談して決めてください。

まとめ

耳たぶや耳の後ろにできる粉瘤とはどのようなもので、どのような治療法が有効なのか。どのような手術を行い、費用はどの程度かかるのかなどを紹介させていただきました。小さな粉瘤は大したことない、にきびのようなものと軽視されがちです。放置することで悪化する可能性のある粉瘤は、早いうちに手術した方が費用も少なく、傷跡も小さく薄く治すことができます。特に耳前面など目に付きやすいところは、早めに対処するようにしましょう。

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