再発の可能性も?粉瘤の処置後に再発させないために気を付けるべきポイント

はじめに

「粉瘤、再発」というキーワードでネット検索をしてみると、何回治療をしても再発して困っている、といった悩み・相談を見つけることができます。それは珍しい例ではなく、同じ悩みを抱えた方がかなりいるようです。
粉瘤とはそんなに再発の可能性の高い病気なのでしょうか。また、再発してしまうのは、病院で治療を受けた後の処置に何か問題があったのでしょうか。
粉瘤という皮膚疾患の原因と症状、およびその治療方法と再発の可能性について紹介していきます。

粉瘤とはどのような皮膚疾患?

粉瘤の見た目は、炎症が起きていないニキビのような外見です。ドーム状に皮膚の一部が盛り上がり、中心に黒い点が見えます。粉瘤を脂肪のかたまりと混同することもありますが、脂肪のかたまりの場合、中心の黒点がありません。
粉瘤を強く圧迫するとにゅるにゅると油っぽい練り物のようなものが出てきます。にきびを絞ってでてくる膿とは粘度も臭いも異なります。脂肪のかたまりは絞ろうとしても何か出てくるということはありません。
粉瘤とニキビ、脂肪のかたまりは似ていてもこのような症状の違いがあります。では、粉瘤とはどのような皮膚疾患なのでしょうか。
粉瘤は、毛根上部の皮膚が内側にめくれ込み、袋状の構造物を作ってしまうのが原因です。なぜそのような構造物を作ってしまうのかについては原因はわかっていません。ウィルスの影響という説もあります。
本来なら身体の外で剥がれ落ちる古い角質や皮脂が、この袋状構造物の中にたまり、ドーム状に膨れてきたものが粉瘤です。
粉瘤は、皮膚嚢腫と呼ばれる腫瘍の一種でもあります。腫瘍といえば癌を心配してしまいますが、粉瘤が癌化するのはまれなケースです。良性腫瘍なので、医師によっては様子をみましょうと診察することもありますが、様子見は手術の先延ばしにしかなりません。

適切な粉瘤の治療方法

粉瘤を放っておくと、どんどん大きくなります。時には炎症が起こりひどい痛みを感じることもあります。粉瘤をこのように悪化させない手段は、1つだけです。早期の手術しかありません。
手術は、その内容にかかわらず誰もが怖いと思います。早期の粉瘤手術は時間もかからず、手術の跡も大きくならずにすませることができます。日帰り手術なので、学校や仕事への影響も最低限ですみます。とにかく粉瘤治療は、早期手術が大切なのです。
粉瘤の手術のポイントは、皮膚の内側にできた袋をきれいに取り除くことです。袋があるから、老廃物がたまってしまうのです。手術は粉瘤の外側に沿って紡錘型に表皮ごと切除します。切除後の傷は縫合し、1、2週間後に抜糸をすれば治療終了です。
手術後は傷口の衛生管理に気をつけておけば、大丈夫です。化膿止めや痛み止めの薬が処方されるので、医師の指示に従って服用します。
手術は局所麻酔で行います。麻酔は場所にもよりますが、予防接種程度の痛みがあります。
このように特別難易度や危険度の高い手術ではないので、恐れることなく早期に手術を行うべきです。
手術を行わずに、内容物を絞り出して炎症止めの薬を塗り、ガーゼを貼っておくといった処置を続けていると、何度でも同じ場所に粉瘤が現れます。

粉瘤を再発させない手術のポイント

粉瘤の手術で大切なことは、袋ごと腫瘍をきれいに取り除くことです。袋が残っていると同じ場所に粉瘤が発生します。
ただ、手術を行うのは医師ですから、我々が手術の出来栄えにとやかく言うことはできません。できることは、粉瘤の手術に慣れた信頼できる医師を見つけることです。言い換えれば、粉瘤治療、手術に詳しい専門医を見つけることが、粉瘤を再発させないコツの1つなのです。
粉瘤の切除がうまくできない理由として、粉瘤が炎症を起こしているということがあります。炎症が起きている粉瘤は、袋に膿がたまって奥のほうで破れている場合もあります。このようなケースでは、袋をきれいに取り出すことができません。切開し、膿や袋にたまった角質や皮脂などをできるだけ掻き出します。そして中を洗浄し、炎症が治まるのを待ちます。この状態では、傷の奥に破れた袋が残っているので、やがて再発する可能性が大です。そこで、炎症が治まった後で、再度切開し、袋を取り除く必要があります。
この炎症型粉瘤の治療を前半でやめてしまうと、粉瘤は再発します。粉瘤治療に詳しい医師なら、かならず2度目の切開を行うように説明してくれますが、患者も手術を望まず医師も消極的な場合、中途半端な状態で治療を終了させてしまうこともあります。

袋状構造物が残る可能性がある手術法

前項では、手術を避けようとして粉瘤の再発が繰り返されるケース、炎症性粉瘤の治療を半端にしてしまったために再発するケースを紹介しました。どちらの場合も袋状構造物の完全切除ができていないために、再発が起きています。
もう1つ、袋状構造物が残ってしまう可能性がある手術方法があります。臍抜き法、あるいは、くり抜き法と呼ばれる手術方法です。
筒型のメスを使って、粉瘤の中心に2〜4mm程度の穴を開け、その穴から粉瘤の内容物と袋を掻き出す方法です。開けた穴は縫合せずにそのまま傷がふさがるのを待ちます。2〜3週間とふさがるまでの時間はかかりますが、傷跡が小さく薄いにきび跡のようにほとんど目立たないことがメリットです。
粉瘤手術の欠点として、粉瘤が大きいほど手術の跡も大きくなってしまうという点があります。
このくり抜き法なら、手術跡が小さく目立ちません。手術痕が心配で、手術に踏み切れなかった方にとっては気になる手術方法でしょう。
ただ、このくり抜き法については、医師の間でも意見が分かれています。穴から袋を掻き出すのは袋を残すリスクがあるのでないかということです。従来の方法のように、袋状構造物を丸ごと切除するのに比べると、皮膚に開けた小さな穴から全て掻き出すのは難しそうです。くり抜き法を推奨する医師は、十分な経験があれば袋を取り切ることは可能で、傷が小さくてすむくり抜き法こそがベストだと主張しています。
こればかりは、どちらが優れていると私たちが決めるわけにもいきません。粉瘤の治療を受けるときに、従来の方法押しの医師とくり抜き法押しの医師の双方の話を聞いて、より納得できる方を選ぶしかなさそうです。

まとめ

粉瘤が再発する可能性は、粉瘤の処置後の過ごし方よりも、粉瘤治療時に問題があるケースが多いと考えられます。適切な治療を受ければ、同じ箇所の粉瘤が再発する可能性は極めて低いはずです。
他の要因としては、多発性毛包嚢腫という粉瘤が考えられます。脇の下などに多数の粉瘤ができる病気ですが、大小の粉瘤がたくさんできるため、手術時に取り逃がす可能性があります。手術前の検査に不備がある可能性もあるので、取り逃がしと思われる粉瘤が後で多く見つかる場合は、別の専門医の検査を受けてみるのもよいでしょう。

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