首のしこりをふいに見つけてしまったとき、こんなことで困った経験はありませんか。
「首の粉瘤(ふんりゅう)の治療法と対処法がいまいちよくわからない」
「しこり自体は痛くも何ともないけどほっといてもいいの?」
実は、その首にできたしこりの正体は、粉瘤(ふんりゅう)(別名:アテローム)という良性の皮膚疾患かもしれません。粉瘤は新陳代謝によって排出される老廃物が皮下にたまってしまうことで発生してしまうしこりです。
粉瘤自体は全身どこでもできる可能性があり、首にできる可能性も低くは有りません。しかし、粉瘤は手術以外では治すことができません。さらに、初期の粉瘤は痛みなどもないので放置されがちです。
しかし、粉瘤はほっておくと炎症を起こしたり、癒着性を持ち除去しにくくなることがあります。そのため、しこりが見つかればすぐに除去することが重要です。
そこで今回、この記事では、以下の3点について解説していきます。
- 首にできたしこりの正体(粉瘤に似た症状の疾患紹介)
- 首にできた粉瘤はどのように治療を進めていけばいいのか
- 首の粉瘤(ふんりゅう)の対処法や治療法
目次
首の粉瘤(ふんりゅう)について
粉瘤は首だけにできるのではなく、全身にできる可能性がある皮膚疾患です。しかし、残念ながら、今でも粉瘤ができる原因はよくわかっていません。
粉瘤の特徴
最初はニキビのように小さく、痛みや痒みなどもないので、そのまま放置してしまいがちな粉瘤ですが、老廃物が袋状に溜まっていくので、粉瘤もそれに伴って大きくなっていきます。
場合によっては5センチ以上の大きさになることもあります。ニキビはここまで大きくなることはないので、この段階になれば粉瘤との違いがハッキリとわかります。触ってみるとコリコリと中にしこりのようなものを感じることができます。
さらに、粉瘤は自然治癒する可能性がほとんどなく、手術による切除によってにみ除去が可能です。そのため、粉瘤に気がついたら早いうちに皮膚科に行くのが良いでしょう。
粉瘤について詳しく知りたい場合は、下の記事について参考にしてみて下さい
首にできる粉瘤に似ている4つのデキモノ
粉瘤が炎症を起こす前の除去は重要ですが、首などの皮膚にできるデキモノの種類は多く、判別も困難です。
主に粉瘤と間違えやすい皮膚疾患などは以下の4つです。
- 脂肪腫(しぼうしゅ)
- 脂腺嚢腫(しせんのうしゅ)
- 皮膚線維腫(ひふせんいしゅ)
- 石灰化上皮腫(せっかいかじょうひしゅ)
症状や見た目も粉瘤と似ているため、経験豊富な専門医でなければ、首のデキモノの正確な区別は難しいでしょう。
そのため、必ず医療機関で診察を受け、正しい診断と正しい治療を受けるようにしてください。粉瘤は塗り薬や飲み薬で治ることはないので、完治させるためには、どうしても除去手術を受けなくてはいけません。
他にも首のしこりで気になるなら下の記事を参考にしてください
粉瘤(ふんりゅう)を放置した場合の3つの危険
肥大化してしまう
首の粉瘤が炎症を起こす前に手術で除去するのが望ましいのですが、自覚症状に乏しい状態では、ニキビなのか粉瘤なのかの判断が難しいというのが実情です。しかし、そのまま放置していれば首の粉瘤はどんどん大きくなります。
強烈な臭いが発生する可能性もある
さらに問題なのは、炎症を起こしてしまった粉瘤は強烈な臭いを発生させるということです。この臭いは、ほかの腫瘍にはない粉瘤ならではの特徴といえるでしょう。周囲の人にデキモノのにおいを指摘されれば、それは粉瘤の可能性が高いです。
細菌感染によって破裂してしまうかも
細菌などに感染してしまうと急激に大きくなることもあります。それでも放置し続ければ、粉瘤が破裂する可能性もあります。粉瘤が一度破裂してしまうと、痛みによって日常生活に支障をきたすケースも珍しくありません。
3つの危険を避けるにはまずは検査から
首のデキモノが気になり始めたら、まずは専門医で適切な検査を受けるようにしましょう。
検査といっても特別なことはなく、内部での老廃物蓄積が確認できれば、すぐに粉瘤と診断されます。なお、大きな粉瘤や、強い炎症を起こした場合には、ほかの腫瘍との区別するためにCTなどによる画像検査をすることもあります。
いずれにしても、悪化してしまうと検査にも時間も費用もかかってしまうので、気になった時点での受診が大切です。
粉瘤(ふんりゅう)が炎症した際の対処法
粉瘤が炎症した場合の危険
粉瘤は良性の腫瘍なので、そのまま放置していても命に関わることは少ないです。しかし、圧迫や衝撃による内部炎症が発生すると、痛みや痒みを伴って腫れて赤くなることがあります。
この状態を「炎症性粉瘤」と呼びます。首の粉瘤は炎症の度合いによっては 10センチほどにまで肥大化するケースもあります。
炎症を起こしたり、予想以上に肥大化したりして首や皮膚に負担がかかることを考えれば、専門医によるできるだけ早い治療が、何よりも重要になります。
抗生剤で炎症を抑える
粉瘤がまだ小さい段階ならば、簡単な除去手術で終わりますが、炎症を起こしてしまっている場合には、手術をする前にやらなければいけない治療があります。
粉瘤が炎症を起こすのは細菌の感染によって起こります。この炎症を鎮めるために抗生物質を用います。ただし、この抗生物質は、粉瘤そのものを治すためのものではありません。炎症を鎮めるために服用する薬です。薬を飲んだからといって粉瘤が完治するわけではありません。
炎症が鎮まれば、粉瘤を手術で除去することになります。少しでも嚢胞が残ると必ず再発しますので、皮下にある嚢胞ごとキレイに切除する必要があります。
粉瘤の手術は何科で受けるべき?
粉瘤は皮膚のできものなので皮膚科に行けばいいというイメージがあります。スムーズな治療のためには、形成外科か、形成外科を併設している皮膚科に行くのがおすすめです。
形成外科を併設した皮膚科
基本的に皮膚科は、粉瘤以外のさまざまな疾患による患者さんで混雑していることが多いため、なかなか手術までの時間が取れなかったり、手術の予約が数カ月先だったりということも頻繁に起こります。
しかし、自分では粉瘤かどうかは区別がつかないのでまずは皮膚科に行って診察してもらうことをオススメします。
形成外科
炎症などを起こさせないためにも、できるだけ早い除去手術が望まれる粉瘤の治療のために何カ月も待つなどということは、できるだけ避けたいものです。
形成外科では、手術のために来院している患者さんが多いため、診断から手術までの流れがスムーズにすすみます。さらに、形成外科医は多くの除去手術をしているので、実績が豊富というメリットもあります。
粉瘤の病院の選び方については下の記事がおすすめです。
粉瘤の手術方法
粉瘤は「くり抜き法」という比較的簡単で傷跡が残らない術式によって除去するのが、最近では一般的となってきています。手術後に抜糸をする必要もないので、何度も通院する手間もありません。
手術時間は15分前後で日帰り手術が可能、シャワーは翌日から、飲酒は1週間後程度からとなります。
このように、粉瘤の手術そのものは大変に簡単で時間もかからないので、首の粉瘤が炎症を起こす前に、手術を受けてしまいましょう。
まとめ
首の粉瘤に限らず、まだたいして自覚症状がないのに病院に行って、診断を受けたり手術を申し込んだりするというのは億劫なものです。しかし、そのまま放置していたことによる炎症や痛み、また、炎症を鎮めるための治療期間などを考えれば、重い腰を上げてでも病院に行って診察を受ける価値はあるでしょう。
粉瘤は良性の腫瘍なので、手術は簡単に終わります。悪化すればするほど時間がかかってしまいますので、首に気になるデキモノがある場合には、早めに専門医のところへ行きましょう。