粉瘤が炎症しやすい場所はどこ?~この場所の粉瘤には要注意!~

前説

「膿みやすい粉瘤の場所が知りたい」
「前は痛みも何もなかったしこりがなぜか触ると痛くなってきた。」
粉瘤や体にできたしこりで悩む方にはこんな悩みを持つ方が多いと思います 。
実は、粉瘤には大きく分けて3種類あり、種類ごとにできやすい場所というものが存在します。粉瘤が炎症を引き起こすのは、実はその種類にはあまり関係なく、「どこにできたものなのか」ということが大きく関係しています。
では、炎症を引き起こす粉瘤が発生しやすいのは、一体どこにできた場合なのでしょうか。

そもそも粉瘤ってなぜできる?

 粉瘤(別名アテローム、あるいはアテローマ)は、本来肌のターンオーバー(新陳代謝)に伴って剥がれ落ちるはずだった角質や皮脂が、毛穴に取り込まれてしまい袋状のものを形成している状態を表しています。粉瘤のほとんどは、医学的に見ると良性の皮膚腫瘍であることから、必ずしも除去しなくてはならないというものではありません。シコリ以外の自覚症状は特にないことも珍しくないため、炎症を起こしていない場合には、医師の判断によってそのまま経過観察を続けることもあります。

 粉瘤には大きく分けて「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」「外毛根鞘性嚢腫(がいもうこんしょうせいのうしゅ)」「多発性毛包嚢腫(たはつせいもうほうのうしゅ」の3種類があり、それぞれ特徴を持っています。

 ほとんどの粉瘤は「表皮嚢腫」と呼ばれるタイプで、全身どこにでもできる可能性があります。一方「外毛根鞘性嚢腫」は主に頭部、「多発性毛包嚢腫」はワキ・腕・首などに比較的多く見られるのが特徴です。
 粉瘤の袋を形成している部分には、主に老廃物が含まれていることから、強い臭いが生じている場合もあります。

粉瘤が炎症しやすい場所はあるの?

 前項でご説明したように、粉瘤には「表皮嚢腫」「外毛根鞘性嚢腫」「多発性毛包嚢腫」の3種類がありますが、そのどれもが炎症を引き起こす可能性を持っています。粉瘤が特に炎症を引き起こしやすい(炎症を起こした粉瘤は炎症性粉瘤とも呼ばれています)のは、臀部(お尻)や背中にできた場合です。

 粉瘤が炎症を起こす原因には、今まで長い間に渡って細菌が関係していると考えられていました。しかしながら最近の研究では、実際には細菌が粉瘤の炎症に関係しているケースはそこまで多くないことがわかってきています。粉瘤が炎症を引き起こす主な原因は、粉瘤の袋を形成している部分になんらかの圧力がかかって破裂してしまい、老廃物を含んだ袋の内容物が皮膚内に入り込んでしまうことであると現在では考えられています。

 そのため、臀部など常に圧がかかっている部分や、背中などの常に洋服との摩擦がある部分にできた粉瘤が炎症を起こしやすい傾向が見られます。もちろん、このような場所にできた粉瘤が炎症を引き起こしやすいというだけであって、基本的には全身のどこにできた粉瘤でも、炎症を起こしたり化膿する可能性があります。

粉瘤が炎症を起こすとどうなる?

 粉瘤が炎症を起こしてしまった場合には、赤く大きく腫れあがり、見た目が痛々しいだけでなく激しい痛みも伴うことも珍しくありません。また場合によっては、発熱や倦怠感も引き起こすことがあるので注意が必要です。

 そのように粉瘤が炎症を起こしてしまった場合には、素人判断はせずに、できるだけすみやかに医療機関を受診する必要があります。粉瘤を診てもらえるのは基本的には皮膚科ですが、場合によっては形成外科・美容外科・美容皮膚科でも可能です。ただし、皮膚科以外を受診した場合には、健康保険適用外(自由診療)となってしまい治療費が高額となってしまうこともあるので、事前に問い合わせることをおすすめします。

 医療機関では粉瘤が炎症を起こしていたり化膿している場合、その場で局所麻酔をして、すぐに皮膚の一部を切開し、内容物を取り除く処置が行われます。切開後、約1~2週間程度の間は、抗菌薬や痛み止めを服用するとともに、切開部分の洗浄を行うために通院する必要があります。

 ここで気を付けなければいけないのは、切開によって粉瘤の膿みや内容物を取り除けたとしても、それで治療が終わりではないことも多いということです。切開をしても、腫瘍全てを取り除けず一部分が残ってしまっている場合には、後日あらためて除去手術を行うケースも比較的よく見られます。

粉瘤を見つけたらどうするのがベスト?

 皮膚にできてしまった粉瘤は、残念ながら自然治癒する可能性はほとんどありません。その理由として考えられるのは、粉瘤の袋状になった部分に含まれている内容物の性質です。この内容物に含まれているのは、元々は肌のターンオーバーで剥がれ落ちるはずだった角質や皮脂などの老廃物です。そのため、粉瘤を取り除かずにそのまま放置しておくと、古い内容物は排出されることなく、逆にどんどん溜まり続けていきます。その結果、粉瘤もさらに大きくなっていく傾向が見られます。

粉瘤を見つけた場合にベストなのは、やはりできるだけ早いうちに取り除いてしまうことです。もちろん医師の判断によっては、そのまましばらくの間経過観察をする、ということもあるでしょう。ただし、そのまま放置しておいても自然治癒する可能性はほとんどないことから、タイミングを見て除去するのが一番の方法といえます。

炎症を起こしてしまった粉瘤の場合は切開しか方法がありません。けれども炎症を起こしていない粉瘤を手術で取り除く場合は、より手術跡が残りにくくダメージの少ない「くり抜き法」や「へそ抜き法」が可能です。粉瘤が炎症を起こしてしまっている場合には、内服薬で炎症を抑えたのちに切開し、再度手術を受けることがありますが、炎症を起こしていない場合には一度の手術で済むため、痛みも費用も少なくて済みます。

まとめ

  • 粉瘤が炎症しやすいといわれているのは臀部と背中の部分が多い
  • 粉瘤の炎症は圧力による内容物の破裂によっておこる
  • 粉瘤の相談は、 形成外科・美容外科・美容皮膚科でも可能だが皮膚科であれば保険がきくのでオススメ
  • 粉瘤の治療手術はすぐに終わるような小規模のものがほとんど

粉瘤で一番つらいのは、炎症を起こしたり化膿してしまうことによる激しい痛みです。粉瘤には大きく分けて3種類ありますが、炎症を引き起こしやすいかどうかということに大きく関係しているのは、種類ではなく「できる場所」です。中でも体圧がかかりやすい「臀部(お尻)」や洋服との摩擦が多い「背中」の粉瘤が炎症を起こしやすい傾向にあります。

粉瘤がある場合には、炎症を起こしていない場合であっても早めに手術で取り除いておくのがベストといえるでしょう。

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