粉瘤が悪性化の前兆をチェック!悪性化の前に治療に行くためのポイント

前説

「粉瘤ってガン化するの?」
「粉瘤は悪性化してしまうのか?」など粉瘤は基本的に良性の腫瘍ですが実際に疾患にかかっている人にとっては不安であるかと思います。
粉瘤は一般的によく見られる皮膚疾患のひとつであり、皮膚に大きなシコリができるのが特徴です。粉瘤のほとんどは、良性の皮膚腫瘍であることが多いため、そこまで心配する必要はありません。
しかし、実は稀に粉瘤が悪性化したというデータもあります。では、粉瘤が悪性化するとどうなるのでしょうか。こちらでは、粉瘤に似た皮膚疾患にはどんなものがあるのか、また、悪性化する粉瘤にはどのような特徴があるのか、ということについてご説明します。

粉瘤の多くは良性だが稀に悪性化することも

 大きな皮膚科ではほとんど毎日のように、最低1件は粉瘤の手術が行われているともいわれています。そのくらい、粉瘤は皮膚科で診察する疾患の中でもかなり頻繁に診るものではありますが、そのほとんどは良性腫瘍です。粉瘤の治療法としては大きく分けて2パターンあります。

  • 一つめは、化膿や炎症がすでに起きてしまっている粉瘤をすぐに切開をして溜まっている膿みを取り除く処置を行いうものです。
  • もう一つは化膿や炎症を起こしていない場合で、その場合は医師の判断でしばらく様子を見ることもあります。ですが、多くの場合はタイミングを見ながら、手術で取り除くことを勧められることもあるでしょう。

 このように粉瘤は、比較的よく見られるとともに、そのほとんどが良性の皮膚腫瘍であることが多いため、悪性化することは滅多にないともいわれています。しかしながら、粉瘤の中には非常に稀ではありますが、悪性化して皮膚悪性腫瘍を生じたというデータも見られます。
 また、粉瘤と同じように皮膚に腫れものができる、という症状を持つ皮膚疾患はほかにも沢山あります。粉瘤だと思って診断してみたら、全く違う病気だったということもおこりえます。不安であれば、とにかく皮膚科に相談してみましょう。

粉瘤に似ている悪性の疾患とは

 粉瘤は皮膚に大きなシコリや腫れものができる疾患です。その大きさは数mm程度であまり目立たないものから、10cmを超えるものまであり、全身どこにでもできる可能性があります。
 しかし、その粉瘤に似た症状を持つ皮膚疾患は数多くあり、代表的なものには下記が挙げられます。

  • 石灰化上皮腫
     石灰化上皮腫とは、20代前後の若い世代の方や、子供によく見られる皮下腫瘍です。粉瘤と非常によく似ていますが、押してみると、皮膚の下にまるで石のような硬いシコリがあるのが特徴です。
  • 脂肪腫
     脂肪腫とは、その名が表しているように、シコリの中に脂肪の塊のようなものが入っています。粉瘤に比べて柔らかく、よく動くのが特徴です。
  • ガングリオン
     ガングリオンとは、主に関節付近にできる、表面が平べったい腫瘍です。皮膚疾患とはまた別のものと考えられており、中にはゼリー状の内容物が詰まっています。
  • 脂漏性角化症
     脂漏性角化症とは、特にお年寄りの顔などにできやすい、いわゆる「老人性のイボ」のことです。頭や顔、体幹部分によく見られます。
  • 皮膚悪性腫瘍
     皮膚悪性腫瘍とは、皮膚にできる悪性腫瘍の総称で、有棘細胞がん・基底細胞がん・悪性黒色腫などがこれに含まれます。

この中で、石灰化上皮腫・脂肪腫・ガングリオン・脂漏性角化症は良性腫瘍ですが、皮膚悪性腫瘍はその名の通り悪性腫瘍なのです。

粉瘤と悪性腫瘍の違いや悪性化する確率は

 粉瘤のほとんどは良性腫瘍であり、あまり心配する必要がない場合が多いのですが、前項でご説明したように、非常に稀ですが悪性化して皮膚悪性腫瘍となる場合があります。
 皮膚科で見られる皮膚悪性腫瘍には、下記のような種類があります。

  • 有棘細胞がん(ゆうきょくさいぼうがん
     有棘細胞がんは、日本人に比較的多く見られる皮膚がんで、徐々に形がはっきりしない腫瘍ができていきます。いわゆる扁平上皮がんと同じですが、皮膚科領域では有棘細胞がんと呼ばれており、潰瘍ができると独特の強い悪臭を生じます。
  • 基底細胞
     基底細胞がんとは、高齢者に多く見られ、表皮の最下層にある毛包や基底層から生じるがんのことです。ほくろにもよく似ていますが、徐々に大きくなり、腫瘤(しゅりゅう)を形成していくのが特徴です。
  • 悪性黒色腫
     悪性黒色腫とはメラノーマとも呼ばれることがある皮膚がんで、一般的に白人によく見られます。メラニン色素を産出しているメラノサイトが関係しているがんであることから、紫外線や外的刺激が原因ともいわれています。日本人の場合、悪性黒色腫の発生率は10万人あたり1~2人とかなり稀です。

このうち、粉瘤が稀に悪性化することによって起こる可能性があるのは、有棘細胞がんと基底細胞がんです。海外医療機関のデータによれば、粉瘤が悪性化して有棘細胞がんとなる確率は0.011%から0.045%となっています。

このデータからは、粉瘤が悪性化することは非常に稀ですが、全く可能性がない、とまではいえないことがわかります。

こんな症状があったら要注意!

粉瘤はごく稀に悪性化して悪性腫瘍となることもありますが、非常に低い確率のため、神経質になり過ぎる必要はありません。粉瘤を多く見ている医師の場合は、悪性化するような兆候があるかどうかということについても、すぐに判断できるはずです。
 しかし、もし自分自身でどうしても気になる部分がある場合には、医師に相談してみることも大切です。一般的には、粉瘤に下記のような症状が見られる場合には、要注意といわれています。
 このような症状が見られたからといって、それが必ずしも悪性腫瘍ということではありません。ただ、どうしても気になるという場合には、一度医師に相談してみてはいかがでしょうか。
 

  • 高齢者の場合
     粉瘤から有棘細胞がんへと悪性化した患者さんの年齢は、平均で61.8歳というデータがあります。
  • 男性の場合
     粉瘤が悪性化しているのは、その7割近くが男性です。
  • 粉瘤が頭または首にできている
  • 粉瘤の大きさが5cm以上ある
     粉瘤の大きさは数mm~10cm以上まで様々ですが、悪性化しているのは5cm以上ある場合が多いようです。
  • 痛みがある
     通常、化膿や炎症を起こしていない粉瘤は、痛みはほとんどありません。しかし粉瘤が悪性化した場合には、痛みが見られる場合があります。
  • 急激に腫瘍が大きくなる
     粉瘤は一度できてしまうと、大きくなっていく傾向にはありますが、悪性化した場合の臨床データからは、急激に大きくなることが多いのがわかります。
  • 粉瘤が潰瘍や赤みを生じたり、内容物が中から出たりする

まとめ

  • 粉瘤は本当にごくまれに悪性化する可能性がある
  • 粉瘤だと思っていたら、別の病名である可能性がある
  • 粉瘤かどうかは大きさに注意
  • 頭や額、首にできたしこりは決して触らずに皮膚科に相談する

ごく稀にではあるものの、悪性化して、有棘細胞がんや基底細胞がんなどの皮膚悪性腫瘍となることもある粉瘤。皮膚科できちんと診察を受けていれば、そこまで神経質になる必要はありませんが、心配な症状がある場合には医師に相談することも大切です。粉瘤が化膿や炎症を起こしていない場合、手術を避けて先延ばしにする方も多く見られます。しかしながら、悪性化する可能性もあることを考えると、やはりできるだけ早く治療を受け、手術で取り除くことをおすすめします。

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