はじめに
「顔になかなか治らないニキビのようなできものがある」
「顔のしこりはニキビか粉瘤なのかわからない」
「 ふと気づくと顔に何か赤っぽい膨らみがあって、さわるとちょっと痛い――こんな場合、ニキビができてしまった 」さて、そのできものはほんとにニキビなのでしょうか?
実はそのしこりはにきびではなくてアテローム(別名:粉瘤)という別の肌トラブルかもしれません。
顔にアテロームができるとはじめは小さくぷくっと皮膚に膨らみができるため、ニキビと混同しやすいのですが、アテロームとニキビは全く似て非なるものなのです。アテロームをニキビだと勘違いして、治療法や対処法を誤ると、危険な事態を引き起こしかねません。
この記事では、アテロームの「症状と特徴」、さらに「顔にできた場合の対処法」を紹介しています。
アテローム(粉瘤)の症状と原因
アテロームは、表皮の下にできる赤っぽい良質腫瘍で、実は身体のどの部位にもできる可能性があります。表皮のすぐ下にできた嚢胞(のうほう)という袋状のものの中に皮脂や角質などが溜まっていくもので、命をおびやかすようなものではありません。
しかし、自然治癒はせず放っておけば徐々に大きくなっていくのが粉瘤の怖いところです。この嚢胞の上に開いた開口部(へそと呼ばれる黒い穴)から細菌が入り込むと、炎症を引き起こし、強い痛みを感じるようになります。この開口部からの炎症がニキビとアテロームの大きな違いでもあります。
なぜ垢や皮脂が皮下に溜まり、嚢胞ができるのかはいまだにはっきりとしておらず、ニキビなどとは異なり、生活習慣などを見直すことで防げるものでもないのがアテロームです。
顔に粉瘤ができてしまい手術しか治療法がないと知ると、傷が残らないか心配になると思います。実は粉瘤の手術は早ければ5分で終わってしまうような手軽なものもあり、できてしまったアテロームがまだ小さなうちに手術を受ければ、傷跡が小さくてすみます。
手術後の傷跡が目立ちにくくなるのも、早期治療の大きなメリットでしょう。早期に対処するためにも、ニキビとアテロームの違いをしっかり認識しておきましょう。
顔にできたアテロームとニキビの違い
アテロームの見た目は顔にできた場合、ニキビとよく似ており、素人目にはなかなか判断がつかない場合が多いです。ニキビと比べると中央に黒い点のようなものが見え、しこりや開口部があるのが、アテロームだと判断するポイントです。盛り上がっている部分を上から押してみると、痛みがあることもあります。皮膚の開口部から出た膿が、不快な臭いとなる場合もあります。
ニキビにも黒ニキビや黄ニキビなど様々な種類のニキビがあります。「ニオイ」「できている場所」「中央の黒っぽさ」の3点に注目してニキビか判断しましょう。しかし当然、自己判断よりも皮膚科を頼るのが望ましいといえるでしょう。
アテロームはニキビのように外用薬では治すことができず、完治するためには手術を受けなければなりません。アテロームがさほど大きくならないうちに手術を受ければ、痛みや傷跡を最小限に抑えることができます。炎症を起こしてしまうとすぐに手術ができません。身体にかかる負担をできるだけ抑えるためにも、できるだけ早期に病院を受診することが大切だとされています。
ニキビがよくできる額やもみあげ周辺、目の周り、頬などは、実はアテロームができやすい場所のひとつでもあります。顔にできたアテロームは、できた当初にニキビだと勘違いされがち。そのため、ちょっとした期間放置され、気づいたときにはかなり大きくなっていたというケースも少なくありません。ニキビと粉瘤の違いを知っておくだけで早期治療が可能になり、金銭的にも身体的にも負担が少なくなくなるといえるでしょう。
アテロームをニキビと間違う危険性
では、アテロームとニキビと間違えてしまい、対処してしまったときには、どんなリスクが考えられるのでしょうか。ニキビは、ある程度大きくなっても、どんどん大きくなり続けるということはありません。熱っぽさや赤み、多少の痛みなどがあるものの、将来的にひどい痛みや不快感につながるわけでもありません。
しかし、アテロームの場合は嚢胞にどんどん老廃物が溜め込まれ、自然に小さくなることはなく、徐々に大きくなり続けます。さらに溜め込んでしまった老廃物が炎症の原因となり、痛みを生じるのです。アテロームの周囲が赤く腫れてしまうのも炎症が起こるからです。
では、ニキビをつぶすようにアテロームをつぶし、炎症の原因である老廃物を取り出してしまえばよいのでしょうか。実はこれは、もっともしてはいけない対処法です。
アテロームをつぶして、中の老廃物を取り除いたとしても、嚢胞自体が表皮の下に残っています。開口部を通して、その嚢胞にまた老廃物が取り込まれることになり、再発を免れません。また、つぶした際の圧力で内容物が皮内に漏れ出し、異物反応を起こすことで炎症が起きやすくなると考えられます 。最悪の場合は、皮膚の内側に向けて破裂した老廃物がリンパ腺に入り込むこともあり、それが原因で死に至るケースすらあるのです。こうした問題を起こさないためには、アテロームをつぶさないことです。ニキビをつぶすような感覚で対処してはいけないのは、このような危険性があるためです。
顔に赤っぽい「できもの」ができたときは
ここまで、アテロームの特徴や見分け方、ニキビとの違いを説明してきました。しかしそれでもなお、「アテロームとニキビを混同してつぶしてしまう危険性についてはわかったけれど、素人目には「ニキビとアテロームの違い」なんてなかなか判断つかない」という声もあることでしょう。また、皮膚にできてしまった「できもの」がアテロームやニキビに限るわけでもありません。
顔に赤っぽい「できもの」ができてしまった。またはしこりのある腫れができてしまったというときは、まず皮膚科を受診し、そのしこりについて正しく診断してもらうことが大切です。
アテロームは自然に治るわけではありませんが、局所麻酔を施す短時間の日帰り手術で十分に対応できます。最近ではアテロームの部位を切開せず、皮膚に開けた小さな穴から内容物を取り出す「くり抜き(へそ抜き)法」と呼ばれる手術が行われており、5mm以下の傷跡ですむため、傷跡が残ることもほとんどありません。
近年では、形成外科や美容皮膚科、美容外科などでもアテロームの手術を受けることはできます。しかし、医院によっては皮膚科で保険診療の範囲内で受けられる手術が自由診療になるケースもあるため、注意が必要です。顔にできた「できもの」を正しく診断してもらいたい、できるだけ費用面での負担を抑えたいという方には、まずは皮膚科の受診をおすすめします。
まとめ
- 顔にできたできものは勝手な自己判断でつぶしてはいけない
- 粉瘤かどうかは 「ニオイ」「できている場所」「中央の黒っぽさ」の3点に注目
- 最近では、粉瘤の手術はすぐに終わり、傷あとも小さくて済んでいしまう。
顔に何だか赤っぽいできものができていて徐々に大きくなっている、顔のできものが少し臭っているように感じる、中心部に黒い点があってしこりもある――こんな場合は、ニキビをつぶすような感覚で、そのできものをつぶしてしまってはいけません。そのできものは、アテロームの可能性があります。アテロームをつぶすと、ひどい炎症を起こす可能性も。最悪の場合は、死に至るケースもあります。
最悪の対処をとってしまわないよう、顔に何らかの「できもの」ができた場合は、皮膚科の受診をおすすめします。