アテローム(粉瘤)は日帰りで手術可能?対応基準と手術法解説

はじめに

アテローム(別名;粉瘤、アテローマ)という皮膚疾患をご存じでしょうか。皮膚の下にしこりのようなものができる疾患で良性の腫瘍なので危険性は少ないのですが、1 度できると自然に治癒することはありません。 さらに、治療法が手術しかないというのも特徴の1つです。
治療法が手術しかないと聞くと
「アテロームの治療法は手術だけって聞くけど本当はどのぐらいかかるの?」
「アテロームの手術ってどんなことするの?」

と感じる方もいるかと思います。
粉瘤は痛んだり、炎症を引き起こしたりすることもあります。手術に際して、何日も入院する必要はあるのでしょうか。

この記事では、「アテロームの治癒のため日帰りの手術が可能なのか」、「その対応基準と、いくつかある手術法」について詳しく説明していきます。
アテロームの症状にお困りで、手術を考えている方は参考にしてみてくださいね。

アテロームの症状と特徴

アテロームは、粉瘤とも呼ばれる良性腫瘍で、表皮の下にできる病変です。皮膚の表面にある開口部から、表皮の下にある嚢胞(のうほう)に角質や垢などの老廃物が溜まっていくものです。カプセルに包まれた古い皮膚や膿がどんどん成長して大きくなる様子を想像するとわかりやすいかもしれません。アテロームは、自然に治癒することがないため、完治させるためにはこのカプセルを取り除く手術が不可欠です。

アテロームは、皮膚があればどこにでもできますが、実際に多い症例は顔や体幹部位です。これを脂肪の固まりやニキビなどと間違えたり、小さいからといって潰してしまうと、炎症したり細菌に感染したりする可能性もあります。痛んだり、さらに大きくなってしまいかねません。

摘出手術を受けるかどうか、いつ手術を受けるかは、患者本人の意志に任せられていますが、そのまま長く放置することで、先に述べたようなさまざまな問題が生じる可能性があります。アテロームの完治を目指すのであれば、痛みや術後の傷跡をできるだけ抑えるためにも、なるべく早期に手術を受けることをおすすめします。

最近では、アテロームの手術を日帰りで行える病院が増えており、炎症や感染を起こした状態でなければ、受診したその日のうちに手術を受けることができます。

アテロームの治療法――小切開摘出術

アテロームの完治を望む場合、治療法として挙げられるのは2種類の手術です。
1つ目は皮膚を切開して嚢腫を引っ張り出す「小切開摘出術」
2つ目は粉瘤の真ん中に4㎜程の小さい穴をあけそこからなかの膿を押し出していくというものです。
まず、1つ目の皮膚を切開して嚢腫を引っ張り出す「小切開摘出術」について説明しましょう。

治療法
 小切開摘出術は、盛り上がった皮膚の表面に開いた開口部(小さな黒い点に見える部分)を中心に皮膚を切開し、表皮の下にできた嚢腫を引っ張り出し、除去するという治療法です。この治療法がすすめられるのは、これまでに一度も炎症を起こしていない人の場合です。

小切開摘出術は一般的に以下のような手順を踏みます。

  1. アテロームのサイズに合わせ、その1倍から2倍の長さでレモン型の切開線をマーキングする。
  2. 局部麻酔を施し、マーキングの線に合わせて切開する
  3. ピンセットを用いて周囲の組織から剥離した嚢胞を引っ張り出す。
  4. 切開した皮膚を縫合して終了。

メリット

  • 再発の恐れがほとんどないこと
     この小切開摘出術では嚢胞をきれいに取り除きやすく、再発の可能性が低いです

デメリット

  • 炎症があると長期化しやすい
     仮に炎症がある場合、それが軽いものであれば、まずは抗生剤や抗炎症剤で炎症を鎮めることから治療を始めます。重い炎症を起こしている場合は事前に一度切開し、膿を出したうえで傷口が治癒するまで期間を置かねばならず、治療期間の長期化が避けられません。
  • 手術痕が残りやすい
     切開手術であり、どうしても傷口が目立つようになってしまいます。アテロームが小さい状態の場合は傷あとも小さいですが、大きくなってしまっている場合はその分の切開が必要となるため傷あとも大きくなってしまいます。

アテロームの治療法――くり抜き法

アテロームの治療法としてもうひとつ挙げられるのが、「くり抜き(へそ抜き)法」と呼ばれるものです。切開法と異なり傷あとが小さく済むのがメリットです。

治療法

円筒状になった特殊なメス(ディスポーザブルパンチ)でアテロームに㎜単位の小さい穴を開け、その中に溜まったものをもみ出すというものです。内容物を全て除去し、しぼんでしまった袋そのものも取り除いていきます。

ここで開ける穴の大きさも、アテロームの大きさなどで変化していきます。一般的に用いられるのは、2mmから6mmサイズのパンチですが、傷口をより目立たないようにと1mmサイズのパンチを用いる場合もあります。

一般的なくり抜き法の手順は次のようなものです。

  1. アテロームのサイズを表皮の上にマーキングする。
  2. 局所麻酔を施す。
  3. ディスポーザブルパンチで嚢腫の袋を貫通させ、アテロームに穴を開ける。
  4. 開けた穴からアテロームの内容物をもみ出す。
  5. 内容物を失ってしぼんでしまった袋も取り除く。
  6. 開けた穴を縫合する。もしくは、ガーゼやテープで保護したり、浸潤療法を用いるなど、傷口の状態を見て判断する。

デメリット

  • 傷口の処理に時間がかかってしまう
     傷口の治癒に少々時間がかかるため、足裏などのアテローム向きではありません。
  • 再発の可能性が切開に比べて高くなる
     くり抜き法で中身がすべて排出されればよいですが、中身が残ってしまう可能性があるので再発の可能性が切開法に比べて高くなります。
  • アテロームの内容物の状態によっては不向きがある
     くり抜き法は内容物を押し出して穴から外に出していく治療法のため、内容物が固形化している場合には穴から内容物が出にくいので、くり抜き法は適さない場合もあります。

メリット

  • 傷口が小さい
     切開せず穴をあけるだけなので、傷口を非常に小さく抑えることができるため、顔面などのアテロームにおすすめです。
  • 少ない時間で済ますことができる
     また、小切開摘出術と比較して、負担が少なく一般的に短時間ですませることもできます。

日帰り手術への対応基準とは?

アテロームの手術で日帰りできるかどうかは、アテロームの大きさやその部位、炎症しているかどうかが影響します。

 アテロームが大きく成長していて、局所麻酔では対応できないと判断されたり、炎症や細菌感染を起こしたりしている場合、その他の持病がある場合は、受診した当日の手術が難しいこともあります。
 切開する大きさによっては、全身麻酔が必要となり、1泊から数泊程度入院しなければならないこともあるので、医師による事前の説明をしっかり聞いておきましょう。

 また、炎症や細菌感染を起こしている場合は、小切開摘出術やくりぬき法で手術しても再発する可能性があったり、傷口の治癒が遅くなったりすることがあります。こうしたリスクを軽減するため、まずは炎症や細菌感染の症状を抑えねばならず、受診した当日に手術を受けることができません。化膿している場合は、局所麻酔を施して膿を排出し、抗生物質などで症状を抑えていきます。

また、受診している病院の体制などによっても治療の段取りが変化しますので、まずはじっくり医師の話を聞き、自分の病態を把握したうえで、納得のいく手術を受けることが大切です。さらに、日帰りでも可能な手術だからと術後のケアを怠ってもいけません。手術当日の入浴や運動は避け、飲酒についてもできるだけ控えてください。

万が一再出血した場合は、乾いたガーゼなどで強く圧迫します。10分ほど圧迫することで、出血を止めることができますので、ご安心ください。

まとめ

  • 粉瘤は自然治癒ほとんど起こらない
  • 小切開摘出術は傷跡はのこりやすいが再発の可能性がひくい
  • そのため、顔など人目に触れる部分ではなく背中などの治療にオススメ
  • くり抜き法は、施術可能なものに向き不向きがあるが、傷あとが小さく済み縫合による治療でなくてもよい場合がある
  • 炎症や化膿が起こっている場合は、手術が即日できない場合がある

 アテローム(粉瘤)の症状や特徴、2種類の手術法などを詳しくご紹介しました。小切開摘出術、くり抜き法のそれぞれの特徴やメリット、ご自分の症状などをしっかり理解したうえで、より負担の少ない治療法を選択することが重要です。

 これらの手術法はいずれも、当日の日帰り手術に対応しています。しかし、患部の大きさや部位、炎症の有無などによって、日帰り手術ができないケースもあります。納得のいく治療のためにも、できるだけ早期に皮膚科を受診し、医師からしっかり説明を受けましょう。

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