粉瘤を除去するための2つのリスクと手術費用とは

はじめに

気がつくと、皮膚の下に何かできものができていて、どんどん大きくなっている――こんな症状は、粉瘤(アテローム)かもしれません。これは、表皮の下にできた袋状のもの(嚢胞)の中に皮脂や古い角質などが溜まってできる良性腫瘍です。そのまま放置しても自然に治癒することはなく、細菌に感染してひどい痛みを引き起こす可能性すらあります。徐々に大きくなるため、医院では、早期に除去手術を受けることをすすめられるでしょう。
しかし、手術と言われると、その費用や身体的なリスクが気になるもの。ここでは、安心して粉瘤除去手術を受けられるよう、その費用とリスクについて詳しく説明していきます。

粉瘤の特徴について知ることが大切

粉瘤は、アテロームもしくは表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)とも言われる構造物のことです。これは、皮膚の表面が落ちくぼみ、袋状になって奥の方に広がった結果、そこに角質や皮脂成分が溜まっていったもの。袋の入り口となる開口部は皮膚の表面にあり、黒っぽい点のようにも見えます。この袋の中にどんどん溜まっていく角質や皮脂成分は垢のかたまりなので、その開口部からはいやな臭いがすることもあります。
初期は、皮膚の下のしこり程度ですが、垢のかたまりが大きくなるにつれ、身体の外側へとふくらんでくるようになります。そのまま放置すると、次第にその見た目が大きくなるだけでなく、細菌感染を起こす可能性があります。しこりが気になってさわってしまったり、衣服などがすれるうちに、表皮の開口部から細菌が入り込み、感染してしまうのです。細菌に感染すると炎症を起こし、ときにはひどい痛みを感じることもあります。
粉瘤は、皮膚の下にできた腫瘍であるため、自然に治癒することはありません。放置していても、粉瘤から癌を発症するという例は非常にまれです。しかしあまり大きくなってしまうと、のちに手術で除去しようというときに身体に負担をかけかねません。身体に大きな負担をかけずに完治したいという方は、できるだけ早期に皮膚科を受診し、医師に相談してください。

粉瘤を治療するための手術あれこれ

粉瘤を完治するためには、手術が不可欠です。手術を行う際は、患者の状態をよく見極めたうえで、よりよい方法を探っていくことになります。
先にも述べたように、粉瘤を発症しているときには細菌感染を起こしやすくなります。このため、細菌感染しているかどうかが、どのような手術を行うかという判断基準にもなります。
何らかの細菌に感染している場合は、膿を出す手術を行い、細菌感染がない場合は、アテロームの構造物そのものを取り出す手術を行います。
細菌感染が起こり、化膿しているときには、破裂してしまうこともあるため、感染症状を和らげる必要があります。これは、膿を出すことを目的にしており、粉瘤の完治は目的ではありません。局所麻酔を施し、膿を出していきますが、一度に全部の膿が出ることは少なく、数度の通院で処置するケースが多数です。
一方で、細菌感染がないときには、粉瘤の完治を目指した手術を行います。これには2種類あり、1つが構造物全体を取り除く摘出手術で、さらにもう1つが、粉瘤の内容物と袋を絞り出すというものです。これらは、粉瘤の大きさやこれまでの状態などを鑑みて、使い分けられています。
いずれにしても再発の可能性は極めて低く、粉瘤の完治を目指す場合には、こうした手術がすすめられることになります。

それぞれの手術の特徴と費用

では、粉瘤を完治させるための2種類の手術について、それぞれの特徴と費用を確認していきましょう。
構造物全体を取り除くための手術を、小切開摘出術と言います。これは、粉瘤のある皮膚を切開し、表皮の下にある構造物全体を取り出す手術で、皮膚の切開や縫合が不可欠です。傷跡が1cm以下の場合はさほど痛みを感じずにすみますが、切開する長さが長くなればなるほど、術後の痛みを感じる割合が強くなるようです。切開・縫合後にはその経過を見るため、何日か医院に通う必要がありますが、抜糸までの期間が1週間から10日と短くてすむのは、小切開摘出術のメリットのひとつです。順調にいけば、術後1年ほどで傷跡がほとんどわからなくなります。
もう1つの手術法が、くり抜き法と呼ばれるものです。これは、粉瘤がある部位の表皮に小さな穴を開け、内容物を取り出したあと、しぼんでしまった袋まで一緒に取り除く方法です。皮膚に開ける穴がとても小さいので、痛みが少ないのが、くり抜き法のメリット。また、手術時間もとても短くてすみ、5分ほどで手術を終えるケースもあります。さらに、傷跡が小さくてすみ、術後の通院が必要ないのも、メリットだと言えるでしょう。
これらの手術は、保険診療が適応します。3割負担の人の場合は、2cm以下の粉瘤除去に5,000円、4cm以下の粉瘤除去に10,000円から12,000円ほどが目安です。

術後に生じうるリスクの数々

手術にリスクが全くないわけではありません。ときおり、細菌感染も起こります。傷跡の縫い目が赤くなっている場合は、細菌感染を起こしている可能性があります。こうした細菌感染を初期のうちに発見するためにも、担当医師に定期的に傷跡を見てもらうことが大切です。
もう1つ想定されるリスクは、血腫ができる可能性があるということです。手術では、それまで粉瘤がスペースを取っていた部位を糸で縫い合わせていきますが、この部位に周辺からじわじわ出血し、血の塊(血腫)ができてしまうのです。この出血の量が多くなると、せっかく縫い合わせた傷跡が開いてしまいかねません。血腫を予防するためには、術後の患部をしっかり圧迫し、固定しておくことです。また、手術した部位をあまり動かさないようにしましょう。どこまで動かしてよいか、医師の指示を守らず自由気ままに過ごしていると、血腫ができやすくなるからです。
さらに、粉瘤がひどく化膿している場合は、大きく腫れてしまいます。この状態で構造物全体を摘出しようとすると、大きく切除せざるをえないため、摘出手術を受けられません。細菌感染時にあえてリスクをおかして摘出しようとするのではなく、まずは感染を抑え、粉瘤を縮小させてから手術に踏み切るようにしましょう。

まとめ

ここでは、アテロームと呼ばれる粉瘤(良性腫瘍)の完治には手術が不可欠であることを述べ、粉瘤治療に用いられる手術法の特徴や方法などをそれぞれ紹介してきました。傷跡の目立ちにくさや治りの早さなど、それぞれがもつメリットや、手術することで生じるリスクの数々についてもくわしく説明しています。
皆さんが粉瘤の治療にチャレンジしようというとき、よりよい方法を選択し、治療結果に満足していただくために、ぜひこの記事の内容を役立てていただきたいと願っています。

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